====== 読み上げて判断する ====== 正拳突きを繰り返すことで奥義に昇華させる、というエピソードが物語でしばしば描かれる。空手の思想でもあるようだ。 同じようにシンプルな技術を研ぎ澄ますことで奥義と化す、そんな技術がライティングにもある。 ここで言う奥義は、学問や武道、芸術などのアーツ(Arts)において重要とされる事柄。極意のことだ。 書いている最中にどう書くべきか判断に悩むことがある、その時に迷いを一刀両断するのが「読み上げて判断する」という技術だ。 別に私だけが行っている技術ではない。この技術に気づいたのは、現場で上手い人が何人も実践していたからだ。 制作中に「これどうしますかぁ?」と私が質問を投げると、そういう人たちは問われた事についていくつかのパターンをぶつくさと呟いて――時には何度も――答えを導き出していた。 実際に喋る、聞くという感覚を用いることで判断の精度を高めているわけだ。 職場で呟くのは恥ずかしいので、私は口を動かすフリだけしている。それでも聞こえる気がするので、頭の中で考えるだけよりずっといい。 こういうことを書くと、読み上げてもわからないという人たちが出てくると思う。そういう人たちは有り体に言うと、教養やセンスがない。 教養は知識であり、センスは感覚のことなのだから磨くことができるはず。まずはインプットを増やしてみよう。 TVのニュース(できればNHK)を聞いて反芻してみたり、名文と呼ばれる小説やエッセーを音読してみたりすると良い。まずは呼吸を掴むのだ。それで読点「、」の打ちどころが分かるようになる。